白内障 阪急京都線西院駅シャトルバス約5分 やまだ眼科

【山田英明: 身近な目の病気 白内障. Eye Bank Journal 7(4):38-41, 2003】

Ⅰ.白内障とは

 しばしば眼の構造はカメラに例えられます。角膜、水晶体はカメラのレンズに相当し、網膜はカメラのフイルムに相当します。白内障とは水晶体が混濁した状態を言います。
 白内障は「しろぞこひ」と言われ、水晶体の混濁が強くなると瞳孔が白く見えます。カメラのレンズが汚れていると綺麗な写真が撮れないのと同様に、白内障になると濁りを通して物を見ることになるので網膜まで光がきれいに届かず、「物が見えにくい」「かすんで見える」「まぶしい」などの症状が出てきます。白内障は眼の中の水晶体が濁って視力が低下する病気なので眼鏡を掛けても視力は回復しません。

   
 ほとんどの場合、白内障は加齢が原因でおこります。髪の毛が白髪になるのと同様に一種の老化現象です。その他にも先天性、アトピー、外傷、糖尿病、放射線被爆などが原因でおこる白内障もあります。白内障の進行する速度には個人差があり10年以上あまり変わらない方もいれば数年で視力が低下する方もおられます。
 近年高齢化社会の進行に伴い白内障の患者さんは増加傾向にあります。白内障の罹患率は60歳代では70%、80歳以上では98%と言われており、現在日本で白内障の手術は年間約80万件行なわれております。

Ⅱ.白内障の治療

 白内障の治療には薬物療法、手術療法があります。薬物療法では点眼により白内障の進行を遅らせます。しかし薬物療法には限界があり、一度進んでしまった白内障を治すことはできません。白内障の進行によって視力が低下し、日常生活に不便をきたすようになると手術療法により白内障を治療します。視力が良くても白内障のために「夜の運転がしにくい」「うっとおしい」「ゴルフボールが見えにくい」などの自覚症状が強い場合は手術をお勧めすることがありますが、視力が悪くても特に車の運転をするわけでもなく日常生活に不自由を感じない方の場合は無理に手術はお勧めしません。しかし白内障が過度に進行し、その合併症などによって失明の危険がある場合には緊急に手術をすることがあります。
 以前の白内障の手術は切開創が大きいため術後砂袋で頭を固定して安静にしなければならず、また眼内レンズがない頃には分厚い眼鏡かコンタクトレンズが必要でした。しかし最近では白内障手術はかなり完成度の高い手術となりました。白内障の進行具合や白内障以外の眼の状態などにもよりますが、手術手技、手術機械の進歩により昔に比べてかなり小さな切開創でより安全な手術が可能になりました。また眼の状態や年齢、体の状態にもよりますが、現在では通院による手術も可能になりました。

Ⅲ.白内障手術

 基本的に白内障手術は全身麻酔では行わず、眼局所に麻酔をかけて行います。麻酔をかけた後、眼に小さな切開を入れます。水晶体はサランラップのような薄い袋によって包まれており、切開創から細い器具を入れその薄い袋の中心部を取り除きます。そこから細い機械を挿入し超音波で中の混濁を細かく砕いて吸い取ります。

 
 白内障が過度に進行し超音波で混濁が砕けない場合には切開を広げて白内障をそのまま取り出すこともあります。そしてほとんどの場合には残した薄い袋の中に眼内レンズを埋め込みます。

 

 しかし中には薄い袋を支えている組織が弱い場合があり眼内レンズを無理に挿入すると危険であると判断した場合には眼内レンズを埋め込まないことがあります。この場合は眼内レンズの代わりにコンタクトレンズを装用します。場合によっては、眼内レンズを眼の中に縫い付けるという方法をとることもあります。
 また手術ですから100%安全確実というわけにはいきません。眼に切開を入れないことには眼の中が触れませんので白内障手術では必ず切開を入れます。切開を入れるとそこから細菌が入り感染を起こす可能性がゼロではなくなります。そうならないようにどこの施設でも抗生物質などで予防はしますが、それでも眼の中で細菌が繁殖して視力が下がる確率は1万に5人(0.05%)と言われており、当然手術の後に眼を触ったりすると感染を起こす可能性は高くなります。また駆出性出血と呼ばれ、手術中に目の奥の血管が切れて出血する合併症が発症して視力が低下する確率は1万人に2人(0.02%)と言われています。

Ⅳ.手術すれば必ず良くなる?

 白内障のために視力が低下している場合、ほとんどの方が白内障手術をすると明るく見えるようになり矯正視力が1.0まで回復します。しかし白内障以外に眼の病気があり、それによって視力が低下している場合はあまり視力が良くならない可能性があります。たとえば元々眼底出血がある場合にはカメラのフイルムに相当する部分が悪くなっているので、いくらカメラのレンズの汚れを取っても、フイルムが傷んでいれば綺麗な写真が撮れないのと同様に白内障手術をしても眼底出血で視力が悪くなっている分に関しては良くなりません。また黒い点や線のようなものが飛んで見えるなどの症状(飛蚊症)は白内障が原因ではないので白内障手術をしても良くなりません。また白内障手術は若返りの手術ではないので、将来はわかりませんが現在の白内障手術では老視は治りません。ですから白内障の手術をしたからといって若い頃と同じ見え方にはなりません。乱視がそれほど強くなく、他に眼の病気が無ければ手術によって眼鏡を掛けずに生活に不自由のない視力を得ることは可能ですが、はっきりと物を見ようと思えば手術をしても遠用、近用の眼鏡が必要になります。